うさぎのかかりやすい病気のひとつとして知られる毛球症。近年では消化管うっ滞の症例のひとつとされる毛球症の原因はどこにあるのでしょうか。
また毛球症(消化管うっ滞)を効果的に予防するにはどんな対策をとればいいのでしょうか。
このページでは、うさぎのかかりやすい病気・毛球症と消化管うっ滞の原因と症状・予防法をご紹介しています。
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●うさぎの毛球症とは
うさぎの毛球症(もうきゅうしょう)は、うさぎが毛づくろい(グルーミング)をする際に飲み込んだ被毛(抜け毛)が毛玉になって腸管などの消化管に詰まり、スムーズに糞が排出できなくなる病気です。
腸の中に毛玉と糞が詰まったうさぎは、次第に食欲が低下し、食べた餌の栄養も吸収できなくなって徐々に弱っていきます。
毛球症にかかったうさぎは、糞の状態や行動(しぐさ)に特徴的な変化が現れますが、気づかずに放置しているとやがて衰弱して死に至ります。
●うさぎは消化器系の病気にかかりやすい動物
当サイトの「うさぎのエサ(餌)の種類と選び方」のページでもご紹介していますが、うさぎは、もともと消化されにくいセルロースを主体とする繊維質の多い牧草などを主食とする草食動物です。
そのため、うさぎの消化器系は、肉食や雑食の猫や犬たちと違い、セルロースなどの消化されにくい繊維の消化を助ける腸内細菌(微生物)の助けを借りながら栄養を得ています。
こうしたうさぎの消化器系は、飼育環境の急激な変化や騒音、捕食動物の存在や多頭飼育などによるストレスにとても弱く、また繊維質の少ない食事(餌)などで腸内細菌のバランスを崩しやすいことが知られています。
うさぎが消化器系の病気にかかりやすく、なおかつ重症化しやすいのはそのためともえます。
うさぎの毛球症は、そうした消化器系の病気の中でもっともうさぎのかかりやすい病気といわれています。
●うさぎの毛球症は「消化管うっ滞」の症例のひとつ
冒頭でもご紹介したように、うさぎの毛球症は、これまで毛づくろい(グルーミング)の際に飲み込んだ被毛(抜け毛)が毛玉となって腸管などの消化器官に詰まり、正常な消化管の働きを阻害することから、同様に消化器官が機能低下や機能停止を起こす「消化管うっ滞」と同一視されてきました。
いわば「うさぎの毛球症=消化管うっ滞」と考えられてきたともいえます。
ところが近年では、うさぎの毛球症はうさぎの消化管が様々な要因によって正常に働かなくなって起きる「消化管うっ滞の症例のひとつ」と捉える見方が主流となっているようです。
つまり消化管うっ滞を起こしているうさぎの消化器系に毛玉が詰まっていれば毛球症という判断です。
たしかに従来のように、毛玉が消化管に詰まることで消化管うっ滞が起きると考えることもできなくはないですが、そもそもうさぎは毛づくろいの際にある程度の被毛を飲み込むのが普通です。
消化器系が健康ならば、よほど大量に抜け毛を飲み込みでもしない限り、ほとんどの場合飲み込んだ被毛は正常に体外に排出されていきます。
そうした本来は体外に排出されるはずの被毛(抜け毛)が正常に排出されなくなっている原因こそが消化管うっ滞という病気で、毛球症はその結果のひとつ、よくある症例のひとつということですね。
そのため現在では、不適切な食事(餌)やストレスによって不調(消化管うっ滞)を起こしたうさぎの消化器系が、排出できるはずの被毛を排出できなくなり毛玉になって詰まって引き起こされるのが毛球症という認識になっているようです。
そうしたことから、これまで行われてきた毛球症対策、たとえば換毛期のこまめなブラッシングや毛球症に良いとされる副食やサプリメントだけでは、本当の意味では毛球症は防げないともいえます。
もちろん従来からの毛球症対策も必要ですが、消化管うっ滞を引き起こす要因を可能な限り排除する対策も併せて行うことが、飼い主さんによりいっそう求められているといえます。
さきほどご紹介したように、うさぎの毛球症は様々な要因によって引き起こされる「消化管うっ滞」による症例のひとつです。
ではうさぎが毛球症(消化管うっ滞)にかかると、どのような症状が現れるのでしょうか。また、どんな兆候に注意すれば早期発見が可能なのでしょうか。
●うさぎの毛球症(消化管うっ滞)は糞と行動の変化に注目
うさぎの毛球症(消化管うっ滞)の症状は、食欲と排便にかかわる変化と、日常的な行動やしぐさの変化を注意深く観察することで早期発見が可能になります。
すでにご紹介したように、うさぎの毛球症は、その背景にある「消化管うっ滞」という消化器系の病気の症例のひとつで、毛玉になったうさぎの被毛で塞がれた腸管からは正常に糞が排出できなくなります。
健康なうさぎであればコロコロとして硬いはずの糞がゆるくなったり、異常にちいさな糞になったり、毛でつながって出てきたり、まったく糞が出なくなるといった排便と糞の状態に関わる変化が症状として現れます。
また、うさぎの日常的な動作やしぐさにも変化が現れ、「元気がない」「じっとうずくまる」「身をよじるような動作をする」「歯ぎしりをする」などの特徴的な動作をするようになります。
こうした行動やしぐさは、毛玉や糞で詰まったおなかの痛みや不快感に伴う行動で、さらに食欲の低下と栄養の吸収がスムーズに行われない状態が続くと体力が衰え衰弱が進んで、うずくまったまま動けなくなり、気づくのが遅れて放置するとやがて死に至ります。
こうした毛球症や消化管うっ滞を疑わせる症状があったり、今までと違ってなにかおかしいな…と感じたら、すぐに獣医さんを受診して判断を仰いでください。
●うさぎの消化器系トラブルに様子見は命取り
毛球症に限らず、うさぎの消化器系の病気は、初期の症状が穏やかに見えるためか、「しばらく様子を見てから…」と考えてしまいがちです。
けれど、毛球症に限らず、うさぎの消化器系の病気は、時間が経過してしまうとそれだけ重症化します。気づかずに放置すると、やがて衰弱して死に至ることになりますので、くれぐれも注意が必要です。
すでにご紹介したように、うさぎの毛球症は毛づくろいの際に飲み込んだ被毛(抜け毛)が毛玉になって体外に排出できないことが直接の原因ですが、その背後には、飲み込んだ毛を正常に排出でできなくなる消化管うっ滞という病気が潜んでいます。
そのため、うさぎの毛球症を予防するには、従来から行われている毛球症そのものに対する対策と、毛球症を引き起こす消化管うっ滞を予防するための対策の両方を行うことが重要になります。
●うさぎの毛球症を予防する対策
うさぎの毛球症を予防するには、従来から推奨されている、セルロース(繊維質)を多く含む牧草を主食として与えること、換毛期や日常的なブラッシング、毛玉症に効果のあるパイナップルやパパイヤ、サプリメントなどの副食が依然効果的な予防法といえます。
うさぎは毛づくろい(グルーミング)の際にある程度の被毛を飲み込んでしまうものですが。こまめなブラッシングによって飲み込む被毛の総量を抑えるように心がけることが有効な予防対策になります。
また、うさぎの毛球症には、従来からパイナップルやパパイヤが良いとされてきました。パイナップルやパパイヤには、飲み込んだ被毛が絡まって毛玉になるのを防ぐ効果があるとされていますので、意識して与えると毛球症に予防につながります。
●うさぎの消化管うっ滞を予防する対策
毛球症を引き起こす要因となる消化管うっ滞を予防するポイントは、うさぎの食事(餌)の改善と飼育環境などからくるストレスの予防が重要なポイントです。
●繊維質が消化管うっ滞予防に効果的なその理由
うさぎの消化管うっ滞を予防するには、まず現在与えている食事(餌)が、ほんとうにうさぎの食性に適しているのかを見なおしてみましょう。
よく知られているようにうさぎは牧草などの繊維質(主にセルロース)の多い植物を主食とする草食動物です。そのため、うさぎをはじめとした草食動物の消化器系は、肉食動物のそれと違って繊維質の多い餌を食べることによって正常に機能すようにできています。
とはいえ、うさぎの消化管にもセルロースを効率よく分解する能力はありません。そこでうさぎは腸管のなかに、セルロースを分解するセルラーゼ(Cellulase)と呼ばれる巣に酵素を持った腸内細菌(微生物)を住まわせ、消化を助けてもらっています。
言い換えれば、こうした腸内細菌は腸内でうさぎが食べた繊維質の多い餌(セルロース)を分解することで自らの栄養を得て、うさぎの消化器官のなかで共生しているともいえます。
そのため、うさぎにセルロースの少ない餌を与え続けていると、この腸内細菌が弱り、結果としてうさぎの消化機能が低下して、消化管うっ滞を招くことになります。今でもうさぎには、牧草などの繊維質(セルロース)を多く含む餌が推奨されているのはこうした理由が背景にあります。
ところが、家庭で飼われているうさぎは、こうしたうさぎ本来の主食ではなく、糖分を多く含むドライフルーツやうさぎ用クッキーなどを与えられることも少なくありません。またこうした甘みのある食べ物をうさぎも好んで食べるため、飼い主としてはつい与えすぎてしまうことも多いものです。
もちろんこうした副食がすべて良くないというわけではありませんが、主食として適さないものを必要以上に与え続けているとどうなるかということを、うさぎの健康という側面から見直す必要があります。
セルロースを分解することでうさぎにも栄養を提供している腸内細菌の働きが弱くなり、その結果消化管うっ滞へとつながっていくことは容易に想像がつきます。
そのため、うさぎが本来必要とする繊維質の多い食べ物、たとえばチモシー種の牧草、あるいはいチモシー種の牧草を主原料としたペレットなどを主食として与えることが、消化管うっ滞や毛球症の予防、ひいてはうさぎの健康維持につながります。
●飼育環境を見直しストレスの原因を取り除く
家庭で飼育されている動物のほとんどは、自然界で暮らすのとはまた違った、多くのストレスを抱えているといわれています。では、具体的にうさぎはどんなことをストレスと感じているのでしょう。
何をストレスと感じるかは、それぞれのうさぎによって個体差があると思いますが、一般的には次のようなものがあると考えられています。
うさぎの品種よる違いや個体差もありますが、うさぎは本来縄張り意識が強く、多頭飼育には向かない動物です。
当サイトの「うさぎの単独飼育とペア飼育(多頭飼育)のメリット・デメリット」のページでもご紹介していますが、うさぎは基本的に同じケージに自分以外のうさぎがいることを不快に感じ、それがストレスとなって体調を屑したりすることが多くあります。
また、「うさぎが快適に暮らせる温度管理と湿度管理のポイント」のページでもご紹介していますが、うさぎか快適に暮らすには、それにふさわしい温度帯があります。
暑さ寒さに対する耐性には個体差もありますが、うさぎが体調を崩すことなく快適に過ごせる気温は、一般に16℃〜22℃、適正湿度は40%〜60%といわれています。
うさぎにとって暑すぎる環境、寒すぎる環境、そして過剰に湿度の高い環境は大きなストレスとなりますので注意が必要です。
さらに、うさぎには一緒に飼うには不向きな動物がいます。当サイトの「うさぎと相性の良い動物・相性の悪い動物」のページでもご紹介していますが、草食動物のうさぎは犬や猫などの捕食動物の存在や匂いに敏感に反応し、近くにいることに強いストレスを感じます。
もちろん、家庭で飼われている犬や猫は、個体差もありますが大人しくうさぎに対して危害を加えることはそれほど多くはないかもしれません。けれど、自然界では狩られる立場のうさぎにとっては、その存在そのものが脅威でありストレスなのです。
そのほか、日常的に騒音の多い場所での飼育や、引っ越しなどによる環境の急激な変化もまた、うさぎには大きなストレスとなります。
うさぎの飼育環境からすべてのストレス要因を取り除くことは不可能かもしれませんが、可能な限り取り除く工夫をすることがうさぎの消化管うっ滞うっ滞の予防、ひいてはうさぎの幸せにもつながります。
○当サイトの出典及び参考書籍:ハムスター・ウサギ・リスたちと暮らす本 (霍野晋吉監修 誠美堂出版)/とってもかわいい!ウサギの育て方(桜井富士朗監修 誠美堂出版)/ウサギとおしゃれに暮らす本 (鈴木麻子著 誠美堂出版)/小動物の飼育情報満載!スモールペット飼育ハンドブック(緑書房)
当サイト、「うさぎ(兎)の飼い方・育て方」では、うさぎ(兎)の上手な飼い方と育て方、うさぎ(兎)の日常の健康管理、初めてでも楽しくうさぎ(兎)と暮らすための育て方のポイントをわかりやすくご紹介しています。
●当サイトのすべてのページは、サイトのページ一覧からご覧いただけます。
●関連サイト:猫の不思議と秘密
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